金額が記載されていないと、金利アップなどで最終的な融資額が減額されても、契約の白紙還元の理由には当たらないとされる可能性があるし、銀行名がないと金利が高く、審査基準の緩い他の金融機関を紹介され、それを利用しないと、やはり手付金没収を迫られる可能性がある。
実行金利と返済負担率の関係に注意が必要金融機関では図表14にあるような返済負担率の上限を設けている。
返済負担率というのは、年収に占める年間返済額の割合のこと。
たとえば、毎月返済額が一〇万円、年間返済額が一二〇万円の人の年収が五〇〇万円とすれば、120万円÷500万円×100=24で、返済負担率二四%ということになる。
通常、民間機関では年収四〇〇万円程度以上の人であれば、返済負担率三五%程度までOKで、「フラット35」の場合には、住宅金融公庫が基準を定めており、年収七〇〇万円以上の人だと最高四〇%まで可能になっている。
しかし、現実の生活で、四〇〇万円の年収でその三五%をローン返済に回すとなると、かなり家計は厳しくなる。
年収七、八〇〇万円までの人であれば、二五%以内に抑えるのが無難だ。
最近は、そうした考え方が住宅ローン利用者にも随分と広がり、返済負担を可能な限り低くしようとする人が増えている。
できるだけ安全な範囲内で住宅ローンを利用して、その後の生活に支障がないようにしようということだが、ローン申込みから融資の実行までに金利が上がってしまうと、その目論見も崩れてしまうことになる。
たとえば、年収五〇〇万円の人が、金利二%で三〇〇〇万円を借りるとすれば、三五年返済を利用する場合、返済負担率は二三・九%になる。
これなら、まずは安心だが、実際に融資を受ける段階の金利が三%に上がっていると、返済負担率は二七・七%にアップする。
四%だと三一・九%だ。
金融機関などの審査基準上はそれでもOKということになる。
実際、そうした金利上昇リスクを見込んで、二%のローンを申し込む人に対しても、金融機関はあらかじめ四%程度の金利で試算して審査を行っているといわれるが、その場合でも返済負担率は三五%内におさまっているので、予定通りに融資してくれる可能性が高い。
そうなると、先の「ローン条項」をタテに売買契約を白紙還元することはできない。
「自分たちの考えでは返済負担率二五%が限度と考えている。
当初の金利ではその範囲内だったが、金利が上がってその範囲を超えてしまったので、この契約は白紙に戻してほしい」といっても、やはり断られるか、解約を受け入れてくれても、手付金などは返してもらえない可能性が高いのである。
これは返済期間三五年の場合だが、年齢などの関係で返済期間がもっと短くなると、この返済負担率の上昇角度はさらに大きくなるので十分に注意しておく必要がある。
これから住宅を購入する、ローンの申込みを行うという人で、物件の完成までの期間が長く、その間に金利上昇が見込まれる場合には、以上のような点にも十分に気をつけておく必要がある。
あらかじめある程度の金利上昇を見込んで返済負担率をシミユレーションして、その上で自分たちの家計状況に問題はないかどうかまで見通しておかなければならないわけだ。
最近は、金融機関などのホームページ上で返済額を試算できるシミユレーク1があるので、フルに活用したいところだ。
以前の公庫融資を利用している人も危ないかつての公庫融資を利用している人のなかには、自分のローンは固定金利型だから安心と思い込んでいる人がいるかもしれない。
公庫融資は二〇〇五年から現在のように全期間固定金利型になったが、それまでは固定金利型とはいいながら、実は二段階固定金利型だった。
これは第2章でも説明したように、申込み時に完済までの金利が決まっているものの、当初一〇年間の金利を低く抑えておき、一一年目以降の金利が高くなるという仕組みだ。
それだけに、あと何年かすると返済開始から一〇年が経過するという人のなかには、金利が大幅にアップして返済額が増額される人が少なくない。
この当初一〇年と一一年目以降の金利は、時期によって異なるが、過去の例をみると次のようになっている。
二〇〇九年に一〇年が経過する、一九九九年に借り入れた人のケースでみると、三〇〇〇万円当たりの毎月返済額一〇万八八六一円が、一二万六六六〇円にアップする。
このまま放置すると一六・四%の増額になってしまうのである。
一〇年が経過するまでにまだ七年も八年もあるという人なら、その間に再び金利が低下する局面がやってくる可能性もあるが、ここ二、三年のうちに一〇年に達してしまう場合には、金利低下の可能性は低いので、金利上昇がはじまったとはいえ、過去の水準に比べるとまだ低い水準にとどまっている間に借換えなどを実行して、返済額増加リスクを解消しておくのが安心だ。
現在なら全期間固定金利型でも三%前後で、金融機関によっては二・九%台が可能だし、固定期間選択型の特約期間一〇年であれば、優遇金利などを利用すれば二%台前半のローンもある。
こうした借換えで、少しでも安心できる期間を延ばしておけば、二、三年後に迫った適用金利上昇、返済額アップに備えることができる。
その時期がきてから考えればいいと放置していると、いざその場に直面したとき、借換え先としては四%以上のローンしかなく、返済額が現在のローンとほとんど変わらないか、それ以上に増えるようなローンしかなかったという事態に至る可能性が高い。
以上のように、すでに住宅ローンを利用している人、これから利用を考えている人、いずれの場合にも、金利上昇に備えてさまざまな対応策をとる必要が出てくる。
具体的にどんな人がどうすればいいのか、次章以降で具体的にみていくことにしよう。
手をこまねいているとたいへんなことになる一度借りてしまったものはどうしようもない!そう思い込んでいる人がいるとすれば大間違いである。
たしかに、固定期間選択型のローン契約書には、特約期間中は他の金利タイプへの切替えはできないといった条件が盛り込まれている。
でも、同じ銀行にこだわることはない。
他の銀行に借り換えることは可能だし、それを脅し文句にすれば、いま利用している銀行でもある程度は柔軟に応じてくれるかもしれない。
放置していると怖いことになるのは固定期間選択型だけではない。
変動金利型も早めに行動したほうがいいが、こちらは原則的に一定の手数料を負担すれば、同じ銀行内で固定期間選択型の特約期間の長いものや、全期間固定金利型などに切り換えることができる。
手をこまねいているのではなく、まずは行動あるのみ。
どんな人にとっても、ある程度の対応策があるし、いま手を打っておくのとそうでないのとでは、一年後、二年後にたいへんな差になってくる可能性もある。
金利上昇のリスクをできるだけ小さくする対策として考えられるのは、他の銀行への借換えや、同じ金融機関内でのローンの組み替えだけではない。
手元にある程度まとまった資金があれば、それを利用して一部繰上げ返済することで元金を減らして、結果的にリスクを小さくする方法も考えられる。
また、手元にまとまったお金がなくても、毎月の返済には多少なりとも余裕があるのなら、毎月の返済額を増額して残りの返済期間を短縮して、リスクを小さくする方法もある。
場合によっては、税制の特典を活かして、親から贈与を受けて、それでローン残高を減らす方法だってある。

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